海外安全対策情報(平成29年度第2四半期分(7~9月))


1.社会・治安情勢
一昨年7月,イランとP5+1(米,英,仏,露,中及び独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされ,昨年1月に同合意が履行に移されました。他方,イラン国内の経済状況について,インフレ率や失業率はやや改善傾向にはあるものの,依然として高いレベルにあるなど厳しい状況にあります。
6月7日,テヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷するテロ事件が発生しました。本件に関し,ISILとつながりのあるメディア「アマーク通信」が,ISILによる犯行と主張しました。同日,内務省は,本件被疑者は殺害され,状況は治安機関のコントロール下にあると発表しました。以後,治安機関は国内各地においてテロリストに対する検挙攻勢を強め,治安の安定化を図っておりますが,引き続き同様のテロ発生への警戒が必要です。
また,依然として邦人に対する強盗や窃盗等,一般犯罪の発生も確認されており,イラン国内での行動に当たっては十分に注意が必要です。
治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。
なお,上記テロ事件に関し,海外安全情報(スポット情報)「テヘランにおけるテロ事件の発生に伴う注意喚起」(http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C129.html)が発出されておりますのでご確認ください。
 
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)概要
イランでは,犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが,各種報道に照らしてみると慢性的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,刃物を使用した強盗等),窃盗(ひったくり,スリ,空き巣等)等の事件が発生しております。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。
・ 7月2日,ホルモズガン州治安維持軍(警察)の発表によると,過去数日間で,同州バンダル・アッバース市内において窃盗・強盗犯人31人が逮捕された。
・ 7月15日午前,テヘラン南部に所在する地下鉄駅シャフレ・レイ構内において,聖職者と口論になったイラン人の男が,刃物を用いて同聖職者1人を刺傷させ,更に通行人3人を刺傷させた。同犯人はその後,駆け付けた警察官により射殺された。
・ 7月25日,テヘラン州警察長官によると,同州において過去2日間で,28の窃盗及び強盗グループが摘発され,113人が逮捕された。
・ 8月19日,テヘラン州警察長官によると,同州内で麻薬類約1,600kgが押収され,麻薬密売人約200人が逮捕された。
・ 8月28日,テヘラン州警察長官によると,直近24時間で,警察により窃盗常習犯101人が逮捕された。
・ 8月29日,テヘラン南部に所在するバスターミナルにおいて,男同士が口論となり,犯人がナイフで切りつけ,1人を殺害,2人を負傷させた。犯人はその場で逮捕された。
・ 9月20日,本年6月にアルダビール州において女児を強姦・殺害した犯人1人に絞首刑が執行された。
・ 9月20日,本年3月にゴレスタン州において警察官5人を死傷させた犯人1人に絞首刑が執行された。
・ 薬物事犯については,4月9日,イランの麻薬対策庁が,イラン暦旧年中(昨年3月20日~本年3月19日)にイラン全国で約705トンの麻薬を押収したと発表しました。また,報道によれば本年7月時点で,全国で約280万人の麻薬常習者が確認されるなど,薬物情勢に好転の兆しは認められず,麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道は後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第2四半期中,当館において3件の邦人被害を把握しております。
【事例(1):窃盗(すり)被害】
8月9日,被害者(旅行者)がテヘラン・シーラーズ間のバス内で仮眠していたところ,貴重品入れ内から現金を窃取された。
【事例(2):窃盗(空き巣)被害】
被害者(在留邦人)が一時帰国により不在中,テヘラン市内ドーラット地区に所在する居宅に犯人が侵入し,ノートパソコン等が窃取された。
【事例(3):窃盗(ひったくり)被害】
被害者(在留邦人)がテヘラン市内のバス停においてスマートフォンを操作していたところ,後方から道路を逆走してきたバイクに乗った犯人に同電話機をひったくられた。
 
3.テロ・爆発事件発生状況
(1)テヘラン市内
6月7日,テヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃によるテロ事件が発生し,18人が死亡,約50人が負傷しました。本件に関し,ISILとつながりのあるメディア「アマーク通信」が,ISILによる犯行と主張しました。同日,内務省は,本件被疑者は殺害・拘束され,状況は治安機関のコントロール下にあると発表しました。本事件後,治安機関は国内各地においてテロリストに対する検挙攻勢を強め,6月24日には,イラン情報省が,テヘランを始めとする国内各地において,コッヅ・デー(6月23日)に係る行事を狙ったテロ攻撃を企図していたISIL関連テロ・グループを解体したと発表しました。
また,9月13日,テヘラン州の革命ガード部隊アミン・ヤミニ司令官の発表によると,同日,同州アンディシェにおいて,イスラム暦モハッラム月(注:西暦9月22日から開始)に開催されるシーア派宗教行事を狙ったテロ攻撃を計画していたISIL構成員1人が逮捕されました。同人はシリア西部に拠点を置くISIL関連組織「Ajnad al-Sham(Soldiers of the Levant)Group」の構成員であり,イランに入国し,テヘラン州のドーラットアーバド地区において一晩潜伏していたところを拘束されました。同人は,当該テロ攻撃の実行のために,300人から成る実行部隊を組織する予定であったと報じられています。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル(「正義の軍隊」の意)」と呼ばれるスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる政府,治安関係者等に対するテロ,爆発事件が複数件発生しています。同地域においては最近,以下の報道が確認されております。
・ 本年7月8日,イラン南東部シスタン・バルチスタン州警察のラヒミ長官は,7日,同州サラヴァン近郊のクーフ・セフィードにおいて,スンニ派過激派組織「ジェイシュ・アルアドル」の拠点から,カラシニコフ銃35丁,14.5mm対空キャノン砲,SPG9丁及び多数の弾薬を押収したことを明らかにした。同長官は,当該押収は警察を始めとする治安機関による監視活動の成果であることを強調するとともに,同テロ・グループはこれらの武器を用いて,同地域における一般市民を狙った攻撃を計画していたと述べた。
・ 7月9日,イラン南東部シスタン・バルチスタン州警察のラヒミ長官は,同州において,スンニ派過激派組織「ジェイシュ・アルアドル」が国境警備隊等治安機関に対するテロを企図していたものの,同州警察が未然に阻止したことを明らかにした。同長官によれば,同組織は,対空キャノン砲等を用いてイラン政府関係者が搭乗するヘリコプターを撃墜する計画を有していたと述べた。
・ 7月15日午後,イラン南東部シスタン・バルチスタン州サラヴァンの対パキスタン国境地点において,テロ・グループが銃火器によるイラン領土への越境攻撃を行い,イラン人一般市民2人が死亡した。同攻撃を受け,革命ガード部隊が反撃し,テロリスト1人を殺害,2人を負傷させたが,2人がパキスタン国内に逃走した。
・ 8月22日,ガンバリ・シスタン・バルチスタン州警察長官の発表によると,同日朝,同州ピシン(注:パキスタンとの国境から約8kmに位置する町)において,バイクに乗り銃器を所持した2人組のテロリストが地方政府施設を襲撃し,同所の警戒に当たっていた警察官1人を射殺した。その後,当該テロリストらは現場から逃走した。
・ 8月25日,ガンバリ・シスタン・バルチスタン州警察長官の発表によると,22日朝に同州ピシンにおいて発生した警察官殺害事案に関し,警察と革命ガード部隊との共同作戦により,犯行を自供した犯人2人が逮捕された。
・ 8月25日,革命ガードの発表によると,8月19日にシスタン・バルチスタン州ピシンにおいて警察官2人及びバシジ(志願民兵)構成員1人が殺害された事案に関し,革命ガード部隊が複数のテロリストを逮捕した。当該逮捕の際,複数の武器・弾薬が押収された。
・ 9月25日夜,当地シスタン・バルチスタン州ザヘダン近郊ハンジャックにおいて,銃器で武装した集団と警察との間で銃撃戦が発生し,警察官2人が負傷した。武装集団はその場から逃走した。
(3)北西部イラク国境付近
北西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」等がクルド人独立民主共和国家の建設を目指し,イラン政府,軍及び治安関係者を標的とした武装襲撃を敢行するなどの動向が見られるほか,ISIL関連動向も見られます。最近も以下の報道が確認されております。
・ 本年7月2日午後,イラン西部西アゼルバイジャン州ピーランシャフル近郊の国境地域において,酒類を密輸していた武装グループとイラン警察国境警備隊員が交戦し,同隊員1人が死亡,3人が負傷した。
・ 7月21日,イラン革命ガードのハムザ・セイエド・ショハダ基地の発表によると,20日午後,イラン北西部国境地域において革命ガードの部隊がテロ・グループと交戦し,テロリスト3人を殺害,4人を負傷させた。当該テロリストのうち1人を拘束したが,残りはイラン国外に逃走した。当該交戦により,革命ガード隊員1人(Colonel Yasin Qanbari)が殉職,1人が負傷した。
・ 8月2日,ケルマンシャー州西部のネエマト・サーデギ検事は,同州のサレポレ・ザハブ(Sar-e pol-e Zahab)において,国境警備隊が,ホルスター入りのけん銃60丁を押収したことを明らかにした。また,当該けん銃の所有者(複数)については,国境を越えてイラク国内に逃走したと述べた。
・ 8月6日,パークプール革命ガード陸軍司令官は,西アゼルバイジャン州西部の対イラク・トルコ国境地域において,革命ガードの部隊がテロ・グループと交戦し,テロリスト2人を殺害,4人を負傷させたことを明らかにした。当該交戦に際し,革命ガードは多数の武器を押収した。同グループは,イラン国内でのテロ攻撃を企図していたとされる。
(4)その他の地域
・ 本年7月6日,イラン北東部ホラサーンラザヴィ州のハッサン・ヘイダリ次席検事は,同州において,イラン国内における自爆テロ攻撃等を企図していたISIL構成員21人が逮捕されたことを明らかにした。同検事は,被逮捕者はイラン国籍者のほか,一部はアフガニスタン国籍で偽造IDを用いた不法入国者であったと述べ,同逮捕は,6月7日のテヘランにおけるテロ事件を受けたISILに対する検挙作戦の一環で行われたものであるとした。
・ 7月9日,イラン北東部ホラサーンラザヴィ州のハッサン・ヘイダリ次席検事は,同州において,イラン国内における自爆テロ攻撃等を企図していた更なるISIL構成員が逮捕されたことを明らかにした。同検事は,同州の治安機関による本摘発作戦に係る被逮捕者は27人に上り,イラン国籍の者のほか,一部はアフガニスタン国籍であるとした。
・ 7月12日,ホセイン・アシュタリ警察長官は,イランの国境地域の治安は,警察を始めとする治安機関の監視活動により良好に保たれていると述べた。
・ 7月24日,アラヴィ情報大臣は,イランの治安・情報機関が,過去4年間で同国内において120以上のテロ計画を阻止してきたことを明らかにし,当該テロ攻撃を企図したテロリスト全てが殺害又は逮捕されたと述べた。また,同機関はイランの治安を完全にコントロール下に置いており,イラン国外からのいかなる侵略にも即座に対応する用意があることを強調した。
・ 8月7日付でイラン情報省が発出した声明によれば,5日の大統領宣誓式の前日,ホラサーンラザヴィ州等において,ISILと関係を有するテロリスト27人が情報省員によって逮捕された。同人らは,複数の武器・弾薬を家電等の日用品に紛れ込ませて密輸の上,イラン国内の宗教都市(注:マシュハド等を指すと思料)におけるテロ攻撃を企図していたとされる。うち10人は,外国情報機関の協力の下,イラン国外に所在する彼らの拠点で逮捕され,残りの17人については国内で逮捕された。被逮捕者うち5人はテロ攻撃の実行役とみられ,残りは兵站要員としての役割を担っていたとされる。
・ 8月9日,ISILはインターネット上にイランを敵視する内容の動画を公開し,イランに対して新たなテロ攻撃を行うと脅迫した。当該動画において,ISILのテロリスト数名がペルシャ語で,イラクとシリアで自分たちに加わることができないのであれば,イラン国内等で同国に対してテロ攻撃をするよう支援者に呼び掛けた。
・ 9月17日夜,当地イスファハン近郊のナジャフアバードにおいて,不審な駐車車両の下底部に仕掛けられた時限式爆破装置が発見され,警察が近隣地区を立入り禁止措置とした。同爆破装置は,革命ガード部隊の爆発物処理班によって撤去され,無害化措置の後に爆破処理された。同部隊司令官によると,現時点,同爆破物が何者により設置されたかについては不明であり,捜査を継続中であるとした。
 
4.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
第2四半期中,誘拐事件が発生したとの情報には接していません。
(2)脅迫事件
第2四半期中,脅迫事件が発生したとの情報には接していません。
 
5.日本企業の安全に関わる諸問題
現時点,日本企業であることを理由とした脅威は特段認められないものの,特にテロ情勢といった上記治安情勢を考慮しますと,引き続き楽観視できない状況にありますので注意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページ等をご確認いただくなどして,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。
海外安全対策情報(平成29年度第2四半期分(7~9月))