海外安全対策情報(平成29年度第4四半期分)

 
1.社会・治安情勢
平成27年7月,イランとP5+1(米,英,仏,露,中及び独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされ,平成28年1月に同合意が履行に移されました。他方,イラン国内の経済状況について,インフレ率や失業率はやや改善傾向にはあるものの,依然として高いレベルにあるなど厳しい状況にあります。昨年12月28日には,マシュハド市等で物価上昇等に対する抗議集会が発生し,これに端を発してテヘラン市内を含むイラン国内各地で抗議集会が発生し一般市民及び治安機関員25人が死亡,複数人が負傷する事案が発生しました。当該抗議集会は収束しておりますが,関連動向には引き続き注意が必要です。
また,昨年6月7日には,テヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷するテロ事件が発生しました。本件に関し,ISILとつながりのあるメディア「アマーク通信」が,ISILによる犯行と主張しました。同日,内務省は,本件被疑者は殺害され,状況は治安機関のコントロール下にあると発表しました。以後,治安機関は国内各地においてテロリストに対する検挙攻勢を強め,治安の安定化を図っておりますが,引き続き同様のテロ発生への警戒が必要です。
さらに,依然として邦人に対する強盗や窃盗等,一般犯罪の発生も確認されており,イラン国内での行動に当たっては十分に注意が必要です。
治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起情報を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集に心掛けてください。
 
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)概要
イランでは,犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが,各種報道に照らしてみると慢性的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,刃物を使用した強盗等),窃盗(ひったくり,スリ,空き巣等)等の事件が発生しております。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。
・ 本年1月13日,ガンバリ・シスタン・バルチスタン州警察長官の発表によると,同州イランシャフルにおいて,外国人5人が金銭目的で誘拐され人質となっていたが,警察による迅速な救出オペレーションにより,犯行から13時間以内に全員解放された。誘拐犯人3人についても警察に逮捕された。
・ 1月17日,キャラジ市の中央刑務所において,強姦罪で服役していた男2人が絞首刑に処された。
・ 2月27日,テヘラン州警察長官によると,同日同州において行われた警察による一斉摘発により,粗暴犯,強姦犯,武器等不法所持者等241人が逮捕された。
薬物事犯については,本年3月28日,イラン警察麻薬対策局が,イラン暦旧年中(昨年3月20日~本年3月20日)にイラン全国で約713トンの麻薬を押収し,前年比で約14%増加したと発表しました。さらに,全国で300万人近くの麻薬常習者が存在するとみられるなど,薬物情勢に好転の兆しは認められず,麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道は後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第4四半期中,当館において2件の邦人被害を把握しております。
【事例:窃盗(スリ)被害】
2月1日,イスファハン州内の混雑するバス内において,背負っていたリュックサックのポケット中からスマートフォン2台を何者かに窃取された。
【事例:窃盗未遂(ひったくり)被害】
3月上旬,テヘラン市内の横断歩道を渡っていたところ,バイクに乗った犯人に,肩に掛けていたかばんをひったくられそうになった。
 
3.テロ・爆発事件等発生状況
(1)テヘラン市内
本年2月5日,刃物を持った男がテヘラン市内の大統領府入口を通過しようとしたところ,警備隊が発砲して阻止し,逮捕されました。翌6日,革命ガード報道官は,本件はテロではない旨説明しています。
また,2月19日,イラン警察の発表によると,同日夜,テヘラン市内北部のパースダーラーン通りに所在する102警察署前において,ゴナーバーディ神秘主義教団の関係者が逮捕されたことに抗議するデモ集会が発生し,暴徒化した同教団の参加者1名がバスを暴走させ,警戒に当たっていた警察官3名を撥ねて殺害しました。また,警察による強制排除の際に,1台の乗用車が暴走し,バシジ(民兵組織)隊員1名が撥ねられて死亡,さらに別の1名のバシジ隊員もナイフで刺されて死亡したほか,この過程で,30名以上の警察官らが負傷しました。当局は警察官等を死傷させた犯人を含む同教団のデモ参加者約300人を逮捕し,更なる混乱を防ぐため,周辺道路を封鎖して治安をコントロール下に置きました。
このほか,抗議デモ・集会の動向として,昨年12月28日には,マシュハド市等で物価上昇等に対する抗議集会が発生し,これに端を発してテヘラン市内を含むイラン国内各地でも抗議・デモ集会が発生し,参加者が治安当局と衝突するなどして複数の死傷者が出ました。引き続き関連動向には注意が必要です。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル(「正義の軍隊」の意)」と呼ばれるスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる政府,治安関係者等に対するテロ,爆発事件が複数件発生しています。同地域においては最近,以下の報道が確認されております。
・ 本年1月4日,南東部シスタン・バルチスタン州ハーシュ市において,警察と武装した麻薬密輸組織との間で交戦が発生し,麻薬対策を担当していた警察官3人が殉職した。
・ 1月12日付の革命ガードによる発表によれば,シスタン・バルチスタン州サラヴァン近郊のパキスタンとの国境地域において,革命ガード部隊が,自爆ベルト等の爆発物,通信機器類等が入った貨物を発見した。同貨物はイラン国内でのテロ攻撃のために国外から密輸されていたものであり,国外に拠点を置くスンニ派過激派組織「ジュンドッラー」が所有するものであるとした。
・ 2月4日付の情報省発表によれば,南東部シスタン・バルチスタン州における情報省部隊による検挙作戦により,麻薬類2,869kgが押収された。当該麻薬類はトヨタ製ピックアップ・トラック2台に積載され,イラン国内に密輸されていた。
・ 3月11日夜,当地シスタン・バルチスタン州サラヴァン近郊のパキスタンとの国境地域において,革命ガード部隊が,2つの自爆テロ・グループによる攻撃を阻止し,同グループを解体した。その後,革命ガードは,同グループが「ジェイシュ・アルアドル」に属していたことを明らかにした。
(3)北西部イラク国境付近
北西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」等がクルド人独立民主共和国家の建設を目指し,イラン政府,軍及び治安関係者を標的とした武装襲撃を敢行するなどの動向が見られるほか,ISIL関連動向も見られます。また,昨年9月25日実施されたイラク・クルディスタン地域(KRG)における住民投票後,イラク・クルディスタンの分離主義及びイラクと共通の敵であるISILに対応する目的で,イランとイラクの国境付近で両国による共同軍事訓練が実施されたほか,イランとKRGを結ぶ国境施設が一次閉鎖されました。最近も以下の報道が確認されております。
・ 本年1月4日付のアラヴィ情報大臣による発表によれば,同月3日,イラン北西部西アゼルバイジャン州ピーランシャフル近郊で,情報省部隊がイランに侵入したテロ・グループを解体した。同グループは,イラン国内の抗議集会に伴う混乱を継続させるため,集会場所等でのテロ攻撃を企図していたとみられ,当該交戦により同グループの構成員1人が逮捕され,複数名が負傷したほか,情報省部隊3人が殉職した。同グループから,カラシニコフ銃5丁,弾薬,手榴弾4個,軍服,暴動を引き起こすための指示が書かれたメモ帳等が押収された。
・ 1月12日朝,西部ケルマンシャー州において,車両に乗り武装した複数の犯人が,群衆に向かって発砲し,少なくとも4人(母親1人及びその娘3人)を殺害して現場から逃走した。治安機関により犯人は特定され,捜査が続けられている。ケルマンシャー州当局者は,本件の動機は家庭内トラブルであるとし,テロの可能性については否定した。
・ 1月24日付の情報省発表によれば,イラン東部及び西部において,同省部隊が,国内の公共の場所におけるテロ攻撃に使用される予定であった爆発物等の隠匿場所2箇所を発見し,それらを押収した。このうち東部で発見された爆発物一式は遠隔操作型爆弾23点を含み,東部国境からサウジアラビア情報機関の工作活動によりイラン国内に運び込まれたものであるとした。また,西部クルディスタン州マリヴァンで発見された爆発物一式は,TNT,起爆装置,AK-47用弾薬,ロケット弾等を含み,イラクのクルド地域からイラン国内に運び込まれたものであるとした。
・ 1月27日,パークプール革命ガード陸軍司令官は,イラン西部国境地域において,革命ガード部隊がイラン国内への侵入を試みたISIL関連テロ・グループを情報省の協力を得て捕捉し,戦闘の末解体したことを明らかにした。当該交戦により,革命ガード隊員3人が死亡,テロ・グループ構成員3人が死亡した。同テロ・グループは計21人で構成されていたところ,残りの18人は逮捕された。
・ 2月28日,ヘイダリ正規軍陸軍司令官は,約6か月前に,同軍のヘリコプター部隊が武装組織PJAKの構成員13人を殺害していたことを明らかにした。
(4)その他の地域
・ 本年1月5日朝,西部ロレスタン州ボルージェルド近郊において,情報省部隊が,MKOと関連を有するテロ・グループを解体した。同グループは,過去数日間にわたって同地における破壊活動を含む反政府抗議活動を扇動していたとみられ,当該交戦により同グループの構成員4人が逮捕され,1人が負傷した。
・ 2月2日,南東部ケルマーン州検察当局の発表によれば,情報省部隊が同州内の民家から銃器等の武器を発見し,それらを押収した。押収された銃器には,AKライフル,G3ライフル,RPG,無線機器等が含まれていた。
・ 2月4日,マルキャズィ州革命ガード部隊の発表によれば,同日,同州マハッラート(Mahalat)において,バシジ(志願民兵)の協力により反政府グループ「RESTART」構成員2人が逮捕された。同グループは,国外に拠点を置く反政府グループと関係を有し,逮捕された構成員らは,同州内でモスクへの放火等の破壊活動を行っていた。
・ 3月4日,当地シーラーズにおいて開催されたタクフィーリ・テロ対策に係る会合において,テロ対策担当のナーテガーン情報省次官が,この数年間で,情報省が,イラン国内でのテロ攻撃を企図していた30以上の武装テロ・グループ(ISILを除く)を解体していたことを明らかにした。
・ 3月6日,バフティヤーリ・イマーム・レザー廟財団副管理者は,これまで,北東部マシュハドに所在するイマーム・レザー廟を標的とした複数のテロ攻撃計画が阻止されてきたことを明らかにした。
 
4.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
・ 本年1月13日,ガンバリ・シスタン・バルチスタン州警察長官の発表によると,同州イランシャフルにおいて,外国人5人が金銭目的で誘拐され人質となっていたところ,警察による救出作戦により,犯行から13時間以内に全員解放され,誘拐犯人3人が警察に逮捕された。
・ 2月4日,シスタン・バルチスタン州警察当局の発表によると,同州サルヴァズにおいて,犯罪グループにより誘拐され人質となっていた被害者1人が,警察による救出作戦により5日以内に救出された。
・ 3月13日,ホラサーンラザヴィ州マシュハドにおいて,武装した3人組に身代金目的で誘拐されていた外国人1人が警察によって救出され,犯人が逮捕された。
(2)脅迫事件
第4四半期中,脅迫事件が発生したとの情報には接していません。
 
5.日本企業の安全に関わる諸問題
現時点,日本企業であることを理由とした脅威は特段認められないものの,特にデモやテロ情勢といった上記治安情勢を考慮しますと,引き続き楽観視できない状況にありますので注意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページ等をご確認いただくなどして,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。