海外安全対策情報(平成30年度第2四半期分)

1.社会・治安情勢
平成27年7月,イランとP5+1(米,英,仏,露,中及び独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされ,平成28年1月に同合意が履行に移されましたが,その後,本年5月,米国はJCPOAからの離脱を表明し,8月には経済制裁第一弾を発表しました。その後,イランの経済状況は徐々に悪化しており,治安への影響が懸念されます。
平成29年12月28日には,マシュハド市等において物価上昇等に対する抗議集会が発生し,これに端を発してテヘラン市内を含むイラン国内各地においても抗議活動が発生し,一般市民及び治安機関員25人が死亡,複数人が負傷しました。その後もイラン国内各地において散発的にこれら経済問題に端を発した抗議活動は発生しています。
イラン国内におけるテロ・襲撃事件については,平成29年6月7日にテヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷する事件が発生しました。また,平成30年9月22日には,フーゼスタン州アフヴァーズにおける聖なる防衛週間の際の軍事パレードにおいて襲撃事件が発生し,24人が死亡,60人以上が負傷しました。昨年来より当地治安機関によるイラン国内におけるISIL関係者の検挙事案が報じられており,また,西部,北西部及び南東部においては分離主義過激派グループ等の活動も活発化していることから,引き続きテロ発生への警戒が必要です。
また,依然として,強盗,窃盗,性犯罪等の一般犯罪の発生も報じられていることから,イラン国内での行動に当たっては十分に注意が必要です。
治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起情報を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集に心掛けてください。
 
2.一般犯罪の傾向
(1)概要
イランでは,犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが,各種報道に照らしてみると慢性的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,刃物を使用した強盗等),窃盗(ひったくり,スリ,空き巣等)等の事件が発生しております。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。            
(1) 6月中,テヘラン市内ゴルハック(Gholhak)において,女性14人に対する猥褻(強制性交行為含む)行為を本年1月頃から行っていた男が逮捕された。白タクが被害者を乗客として乗せ,その後,刃物で脅すなどして犯行に及んでいた。
(2)  7月上旬,シスタン・バルチスタン州警察は,イランシャフル市における連続婦女暴行犯人(内務省発表よると被害者は4人)を逮捕した。
(3) 7月下旬,テヘラン南東部シャフルレイ地区の公園において,私服警察官を装った犯人が市民に声を掛け,麻薬容疑の職務質問を行うと市民に声を掛け,携帯電話の捜査をするため携帯電話を一時預かるので,後ほど警察署に取りに来てほしい旨被害者に告げ,そのまま携帯電話を持ち去った。
(4) 8月上旬,テヘラン市内エラヒエ地区において,30歳前後の水道局員を装った男が,イラン人女性(80歳)宅を訪問し,同女性を殺害した。
(5) 8月下旬,テヘラン市内北西部バーゲ・フェイズ地区において,54歳の主婦が路上を歩いていたところ,建物の管理をしていたアフガニスタン人(50歳)の男に建物内に引きずり込まれて殺害され,貴金属や携帯電話を奪われた。
(6) 9月上旬,テヘラン東部イマーム・ホセイン広場近くの路上において,黒色ボクサー(オートバイ)に乗った若い男が路上を歩いていた60歳の女性から携帯電話をひったくり,その際,同女性は地面に打ち付けられ,意識不明となり,病院に搬送された。
(7) 9月上旬の現地報道によると,テヘラン市内のアーザーデガーンハイウェイで白タク(現地車の「プライド」)が女性客を乗せ,空き地に連れて行った上で,性的暴行を加えた(他に被害者が2人いることが明らかになっている)。
(8) 9月中旬,午前6時45分頃,ジョルダン地区において,走行中の当地在留邦人が出勤のため乗車する車両(運転手有り)に,イラン人の男が突然自分の手を車両のサイドミラーに当ててきた。車両はそのまま立ち去ろうとしたが,イラン人の男は他の男2人とともに,車両で追いかけてきたところ,在留邦人乗車の車両が事務所の駐車場に入庫したため,男らは立ち去った(当たり屋とみられ,金銭を請求しようとしたものとみられる。)。
   薬物事犯については,本年3月28日,イラン警察麻薬対策局が,イラン暦旧年中(昨年3月21日~本年3月20日)にイラン全国で約808トンの麻薬を押収し,前年比で約14%増加したと発表しました。また,全国で280万人近くの麻薬常習者がいるものとみられ,麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道も後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第2四半期中,当館において2件の邦人被害を把握しております。
(1) 強盗未遂
7月20日午前0時頃,テヘラン大学に留学している日本人学生が同大学付近においてイラン人3人(1人はバイク乗車)にナイフの柄で殴られるなどして,所持していた荷物を強取されそうになったが,被害者が叫んで助けを求めたため,犯人はそのまま逃走した。
(2) 窃盗(置き引き)
  9月23日,当地出張中の邦人がテヘラン市内のドライブインのトイレ内に鞄(旅券と現金2億リアル在中)を置き忘れ,持ちさられた。
 
3.テロ・爆発事件等発生状況
(1)テヘラン市内
テヘラン市内では,昨年6月以降,テロ・爆発事件は確認されておりません(第2四半期中主な報道なし)。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
      南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル(「正義の軍隊」の意)」と呼ばれるスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる政府,治安関係者等に対するテロ,爆発事件が複数件発生しています。同地域においては最近,以下の報道が確認されております。
    ○ 7月21日の報道によると,シスタン・バルチスタン州ザヘダン・クーリーン地区でバシジ2名,ラールで兵士兵1名がそれぞれ武装集団との戦闘により死亡した。
○ 8月31日,シスタン・バルチスタン州サラヴァン国境地帯において,革命ガード陸軍とテロリスト集団が戦闘となり,テロリスト4名が死亡し,3名が負傷した(革命ガード兵士1名負傷)。
○ 9月5日,シスタン・バルチスタン州サラヴァン国境地帯において,ジェイシュ・アルアドルが国境警備隊の監視塔を攻撃したが,同隊により撃退された。
○ 9月28日,シスタン・バルチスタン州サラヴァンにおいて,革命ガードとジェイシェル・アドルが戦闘となり,ジェイシェル・アドル副官含むテロリスト4名が死亡し,2名が負傷した。
(3)北西部イラク国境付近
北西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」等がクルド人独立国家の建設を目指し,イラン政府,軍及び治安関係者を標的としたテロを敢行するなどの動向が見られるほか,ISIL関連動向も見られます。最近も以下の報道が確認されております。
○ 7月14日,ケルマンシャー州ノウデシュにおいて,革命ガード陸軍とテロリスト集団が戦闘となり,テロリスト3名,バシジ隊員1名が死亡した。
○ 7月16日の情報省の発表によると,同15日,西アゼルバイジャン州において,テロリスト集団との戦闘により,テロリスト2名が死亡した。
○ 7月22日,クルディスタン州マリヴァーン市で,イラン側に侵入しようとしたテロリストと革命ガードの間で戦闘となり,バシジ隊員11名が死亡した。
○ 8月14日,西アゼルバイジャン州サルダシュト及びケルマンシャー州ラヴァンサルの国境付近において,PJAKの攻撃により,革命ガード3名と及びイラン治安維持軍1名が死亡した。
○ 8月16日,クルディスタン州バーネの国境付近において,テロリストの攻撃により,パトロールしていた国境警察官4名が死亡した。
○ 9月8日,革命ガードは,イラク側クルド地域のテロリスト集団に対するミサイル攻撃を実行したと発表した。
(4)その他の地域
○ 7月16日,情報大臣は,ザンジャーン州において,ISILに参加するためにイラン国内にテロリスト集団を作り,テロの計画も立てていた同関係者4名を逮捕したと発表した。
○ 9月8日,ホルムズガン州ミナブ市トゥカフール区に所在する警察署が車両から銃撃され,警察官3名が死亡した。
○ 9月22日,フーゼスタン州アフヴァーズにおいて,テロリスト5名が軍事パレードが襲撃を襲撃し,24人が死亡,60人以上が負傷した。 
 
4.抗議活動発生状況
イラン全国において散発的に発生している経済問題に端を発した抗議活動については,現時点,抗議活動は収束しているものとみられるものの,今後の関連動向には引き続き注意が必要です。最近も以下の抗議活動が確認されています。
  ○ 7月31日から,イラン各地(イスファハン,シーラーズ,キャラジ,マシュハド,アルボルズ州エシュテハルド)において,市民によるイランの経済問題に端を発した抗議活動が行われましたが,いずれも,イラン治安機関のコントロール可能な程度であり,エシュテハルドを除いては暴力事案には発展しませんでした(エシュテハルドでは,3日夜,神学校への投石事案が発生しましたが,物的損害にとどまり,機動隊により鎮圧されました)。
 ○ 同期間中,テヘラン市内においても抗議活動が行われたとされるSNSの投稿もありますが,実際にテヘラン市内においても抗議活動が行われたかは確認されていません。
 
5.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
  第2四半期中,外国人が誘拐事件の対象となったとの情報はありません。
(2)脅迫事件
      第2四半期中,外国人が脅迫事件の対象となったとの情報はありません。
 
6.日本企業の安全に関わる諸問題
    現時点,日本企業であることを理由とした脅威は特段認められないものの,現下の治安状況,抗議活動及びテロの情勢を考慮しますと,引き続き楽観視できない状況にありますので注意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページ等をご確認いただくなどして,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。