海外安全対策情報(平成30年度第4四半期分)

平成31年4月10日


1.社会・治安情勢                                               

平成29年12月28日,マシュハド市等において物価上昇等を訴える抗議活動が発生し,その後,同活動がテヘラン市内を含むイラン国内各地に飛び火したことにより,一般市民及び治安機関員25人が死亡,複数人が負傷しました。平成31年1月以降も,イスファハン州の水問題を捉えた抗議,フーゼスタン州の賃金の未払いを訴える労働者による抗議,また,テヘラン含むイラン各地(タブリーズ,ヤズド等)における経済的な困窮を訴える教師による抗議活動等,経済問題等に端を発した抗議活動は散発的に発生しています。

イラン国内におけるテロ・襲撃事件については,平成29年6月7日にテヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷する事件が発生しました。また,平成30年9月22日には,南西部フーゼスタン州アフヴァーズ市で軍事パレードに対する銃撃事件(24人が死亡,60人以上が負傷)が発生しました。その後,南東部,南西部含むイランの南部地域においては,テロ関連事案が断続的に発生しており,12月6日には南東部シスタン・バルチスタン州チャーバハール市の警察本部に対する自動車爆弾テロが発生(治安機関員2人が死亡)し,平成31年2月13日には同州ハーシュ市~ザヘダン市間の道路において,革命ガードのバスに対する自爆テロ(車両利用)が発生(革命ガード兵27名死亡)するなど,南部地域における治安情勢はやや不安定になっているものとみられ,今後の動向を注視する必要があります。

また,依然として,殺人,強盗,窃盗,性犯罪等の一般犯罪の発生も多々報じられていることから,イラン国内における行動については,十分に注意が必要です。

治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起情報を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集に心掛けてください。

 

2.一般犯罪の傾向

(1)概要

イランでは,犯罪発生件数に関する統計が公表されていませんが,各種報道によると,日常的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,けん銃及び刃物を使用した強盗等),窃盗(ひったくり,スリ,空き巣,忍込み等)等の事件が発生しております。また,昨年来,観光客の少ない地方都市において,女性の一人旅を狙った性犯罪が発生していることから,同地方都市等においては女性の単独行動は極力控えるなどの注意が必要です。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。

(1) 強盗(住宅強盗)

1月上旬,テヘラン市内中心部フェレスティン広場近くの老婦人宅に目をつけた強盗犯が,同宅のチャイムを鳴らし,「隣の者です。」と告げたところ,老婦人がドアを開けたため,強盗犯は同宅内に押し入り,所持していたけん銃を老婦人の胸に突きつけた。しかし,同婦人が抵抗し,強盗犯を廊下に突き飛ばしたため,騒ぎを聞いた隣人が駆けつけ,強盗犯は拘束された。

(2) 昏睡強盗

 バスの乗客をターゲットにした昏睡強盗犯3人(25,40歳及び54歳)が逮捕された。彼らはイラン国内の都市間を走るバスの中で,意識を失わせるための成分の入った果物ジュース等の飲み物を乗客に飲ませ,意識がなくなったあとに乗客の所持品を盗取していた。乗客が飲まされた飲み物は,意識を失わせる成分が混入されたのち,飲み口のキャップを再度封印し,まだ封が開けられていない状態にして,バスの乗客に提供していた。

  (3) 窃盗

    買物を終えた若い女性が,インターネットでタクシーを呼び,メヘラバード空港近くの自宅に帰り,購入した物の一部を自宅内に運び,残りの物を取りにタクシーに戻ったところ,購入した物と鞄の中に入れていた4百万リアルが盗まれていることに気がついた。警察が隣家の防犯カメラを確認した結果,犯人はタクシーの運転手と判明し,また,同犯人はインターネットタクシーの会社に登録されている運転手であったため,警察により直ちに逮捕された。

(2)邦人被害事案

第4四半期中における邦人被害は把握しておりません。

 

3.テロ事件等発生状況

(1)テヘラン市内

テヘラン市内では,一昨年7月以降,爆弾テロ事件は発生しておりません(第4四半期中に主たる報道なし)。爆弾テロ以外では,3月12日,テヘラン市内にあるポルトガル大使館近くで,自動車に乗車していた同大使館職員(イラン人)が,オートバイに乗車した者にエアーガンで撃たれるという銃撃事件が発生(被害者は軽傷)しました。

(2)北西部イラク国境付近

北西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」等がクルド人独立国家の建設を目指し,イラン政府及び治安部隊を標的としたテロを敢行する動きがみられるほか,ISIL関連動向も見られます。最近の関連報道は以下のとおりです。

○ 2月21日付イラン情報省ウェブサイトによると,クルディスタン州において,爆弾テロを企図していたISILと関係を有するテログループが特定され,メンバーらが逮捕された。

○ 3月17日,クルディスタン州バーネ市のイラクとの国境線付近において,パトロール中の国境警備兵1名が武装集団の攻撃を受けて死亡した。

(3)南東部パキスタン国境付近

      南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル」,「アンサール・ル・フォルガン」と称するバルーチ族のスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる治安部隊等に対するテロが複数件発生しており,最近も以下の報道が確認されております。

○ 1月8日,シスタン・バルチスタン州ザヘダン市において,交通警察官1名が銃撃され死亡した。

○ 1月29日,シスタン・バルチスタン州ザヘダン市で音響爆弾が爆発し,4名が負傷した。その後,ジェイシュ・アルアドルが犯行声明を発出した。

○ 2月2日,シスタン・バルチスタン州ニックシャフル市内にあるバシジ基地が襲撃され,バシジ隊員1名が死亡した。その後,ジェイシュ・アルアドルが犯行声明を発出した。

○ 2月5日,シスタン・バルチスタン州サルバーズ地方の治安維持軍の基地及びサルバーズ・キャッラート郡の行政庁舎に銃弾が撃ち込まれた。

○ 2月13日,同州ハーシュ市~ザヘダン市間の道路における革命ガードのバスに対する自爆テロ(車両利用)により革命ガード兵27名が死亡した。その後,ジェイシュ・アルアドルが犯行声明を発出した。

(4)南西部

   南西部では,「アル・アフワーズ」と称するアラブ系反政府組織等が存在し,同組織らによる治安部隊等に対するテロが複数件発生しており,最近も以下の報道が確認  されております。

○ 1月26日,フーゼスタン州バンダレ・エマーム・マーフシャフルにおいて,車両でパトロール中の警察官2名がカラシニコフによる銃撃を受けて死亡した。その後,アル・アフワーズが犯行声明を発出した。

○ 3月8日,フーゼスタン州アフワーズ市エンゲラーブ地区において,乗用車に乗車した者がカラシニコフを空に向けて発砲した。

 

4.抗議活動発生状況

第4四半期中の抗議活動については,イスファハン州における水問題を捉えた抗議,フーゼスタン州における賃金の未払いを訴える労働者による抗議,また,テヘラン含むイラン各地(タブリーズ,ヤズド等)における経済的な困窮を訴える教師による抗議等,経済問題等を端に発した抗議活動が散発的に行われましたが,これら抗議活動は比較的小規模な抗議行動でした。しかし,今後の経済状況の変化により,特定地域で行われる抗議行動が全国的に拡大し,大規模抗議行動に発展する可能性は否定できません。したがって,関連動向には引き続き注意が必要です。

 

5.誘拐・脅迫事件発生情報

(1)誘拐事件

 第4四半期中,外国人が誘拐事件の対象となったとの情報はありません。

(2)脅迫事件

      第4四半期中,外国人が脅迫事件の対象となったとの情報はありません。

 

6.日本企業の安全に関わる諸問題

    現時点では,当地における日本企業及び外国企業を対象とした脅威は特段見られません。ただし,上述のとおり,経済問題に端を発した大規模抗議行動の発生可能性は否定できないため,引き続き留意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなどして,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。