海外安全対策情報(令和元年度第1四半期分

令和元年7月8日

海外安全対策情報(令和元年度第1四半期分)

 

1.社会・治安情勢                                               

平成29年12月28日,マシュハド市等において物価上昇等を訴える抗議活動が発生し,その後,同活動がテヘラン市内を含むイラン国内各地に飛び火したことにより,一般市民及び治安機関員25人が死亡,複数人が負傷しました。その後,大規模抗議活動は発生していませんが,本年5月には,バス運転手組合員等の労働者が国会前に集結し,物価の高騰等に対する抗議活動が行われ,また,同月,南部フーゼスタン州において,サトウキビ精製会社の労働者が賃金の未払い等に対する抗議活動を行うなど,経済問題に端を発した抗議活動が散発的に発生しています。

イラン国内におけるテロ・襲撃事件については,平成29年6月7日にテヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷する事件が発生しました。また, 平成30年9月22日には,南西部フーゼスタン州アフヴァーズ市で軍事パレードに対する銃撃事件(24人が死亡,60人以上が負傷)が発生しました。その後,南東部,南西部含むイランの南部地域においては,襲撃事案等が断続的に発生しており,12月6日には南東部シスタン・バルチスタン州チャーバハール市の警察本部に対する自動車爆弾テロが発生(治安機関員2人が死亡)し,平成31年2月13日には同州ハーシュ市~ザヘダン市間の道路において,革命ガードのバスに対する自爆攻撃(車両利用)が発生(革命ガード兵27名死亡)するなど,南部地域における治安情勢はやや不安定になっているものとみられ,テロ・グループと治安機関の戦闘が散発している北西部及び西部含め,今後の同地域におけるテロ・グループの動向を注視する必要があります。

また,依然として,殺人,強盗,窃盗,性犯罪等の一般犯罪の発生も多々報じられていることから,イラン国内における行動については,十分に注意が必要です。

また,最近のイランをめぐる国際情勢についても注意が必要です。

安全関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起情報を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集に心掛けてください。

 

2.一般犯罪の傾向

(1)概要

イランでは,犯罪発生件数に関する統計が公表されていませんが,各種報道によると,日常的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,けん銃及び刃物を使用した強盗等),窃盗(ひったくり,スリ,空き巣,忍込み等)等の事件が発生しております。また,昨年来,観光客の少ない地方都市において,女性の一人旅を狙った性犯罪が発生していることから,同地方都市等においては女性の単独行動は極力控えるなどの注意が必要です。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。

  (1) 果物等販売車におけるスキミング被害の発生

4月23日付の報道によると,町中の道路で小型トラックに果物等積載して販売している業者が,客のキャッシュカードを支払時にスキミングし,その後,客の口座から現金を全部引き出したとして逮捕された。200件の余罪があるとみられる。特に,テヘラン西部における犯行が多かった。

(2) 6月13日付の報道によると,同11日午後7時頃,テヘラン南東部アミンアーバードにおいて,15歳の女性2人がインターネットでタクシーを呼び,同タクシーに乗ったところ,運転手は車両が壊れたと言って途中でタクシーを停め,後部座席に座っている女性2人に性的危害を加えた。

(2)邦人被害事案

第1四半期中における邦人被害は把握しておりません。

 

3.テロ事件等発生状況

(1)テヘラン市内

テヘラン市内では,一昨年6月以降,テロ事件は発生しておりません(第1四半期中に主たる報道なし)。

(2)北西部及び西部イラク国境付近

北西部及び西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」等がクルド人独立国家の建設を目指し,イランの治安部隊を標的としたテロを敢行する動きがみられ,最近も以下の報道が確認されています。

○ 5月27日,ケルマンシャー州犯罪捜査局長のチームがパトロール中,不審車両から発砲を受け,同局長が死亡した。

○ 5月29日付の報道によると,西アゼルバイジャン州チャールダラーンの国境からイランへの入国を企図したテロ・グループと革命ガードが戦闘となり,同テロリスト数名が死亡し,革命ガード兵士1名が殉職した。

○ 5月31日,クルディスタン州サナンダジュで行われるコッヅ・デーのパレードを狙ったテロを企図したとして,テロリスト3名が逮捕され,カラシニコフ等の武器が押収された。

○ 6月23日,西アゼルバイジャン州チャールダラーンにおいて,テロ・グループと革命ガードが戦闘となり,テロリスト1名が死亡し,同1名が逮捕された。 

(3)南東部パキスタン国境付近

南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル」,「アンサール・ル・フォルガン」と称するバルーチ族のスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる治安部隊等に対するテロが複数件発生しており,最近も以下の報道が確認されています。

○ 4月8日,シスタン・バルチスタン州ニックシャフル近郊において,友人と共に自動車に乗っていた警察官が銃撃されて死亡した。

  6月25日,シスタン・バルチスタン州ザヘダン市の道路において,音響爆弾が爆発し,警察官2名が負傷した。

(4)南西部

南西部では,「アル・アフワーズ」と称するアラブ系反政府組織等が存在し,過去同組織らによる治安部隊等に対するテロが複数件発生しており,最近も以下の報道が確認されています。

○ 5月29日,ファールス州カーゼルン市の金曜礼拝導師が礼拝から帰宅した際に何者かにより殺害された。

 

4.抗議活動発生状況

第1四半期中の抗議活動については,5月1日,国会前にテヘラン・バス運転手組合員等の労働者が集結し,価格の高騰等に対する抗議活動が行われ,35人以上が逮捕され,また,5月9日付の報道によると,南部フーゼスタン州において,サトウキビ精製会社の労働者が賃金の未払いや保険の未加入に対する抗議活動を行い,18人が逮捕されました。このように経済問題を端に発した抗議活動が散発的に行われましたが,これら抗議活動は比較的小規模な抗議行動でした。しかし,今後の経済状況の変化により,特定地域で行われる抗議行動が全国的に拡大し,大規模抗議行動に発展する可能性は否定できません。したがって,関連動向には引き続き注意が必要です。

 

5.誘拐・脅迫事件発生情報

(1)誘拐事件

  第1四半期中,外国人が誘拐事件の対象となったとの情報はありません。

(2)脅迫事件

      第1四半期中,外国人が脅迫事件の対象となったとの情報はありません。

 

6.日本企業の安全に関わる諸問題

    現時点では,当地における日本企業及び外国企業を対象とした脅威は特段見られません。ただし,上述のとおり,経済問題に端を発した大規模抗議行動の発生可能性は否定できないため,引き続き留意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなどして,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。