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         イランにおける大気汚染について
         (2015年11月22日現在)

 報道などによれば,テヘランにおける大気汚染の深刻化により教育機関の一時的な閉鎖,当局が住民に対して屋内にとどまるよう警告発出された旨報じられています。在留邦人の皆様や,イランに滞在中の皆様におかれましては以下を参考にしつつ,必要な健康上の対策をとることをお勧めするとともに最新の関連情報などの収集にご留意ください。

1 大気汚染の発生状況と健康への影響等
(1)概況
テヘランの大気汚染は,約10年前から顕在化しています。毎年,WHO設定基準より大気の状態が悪い日が続いており,例えば2013年においては,PM2.5値が基準値より高い日が年間298日ありました。他の汚染物質値も同様の状態です。
テヘランでは,毎年約2,100人が大気汚染の影響で死亡していると推定されますが実際はもっと多いと思われます(データによっては4000人とも)。PM2.5やPM10等の汚染物質の約70%は車から排出されるものであり,また,二酸化硫黄はガソリン中に含まれる汚染物質です。
地理的特徴も大気汚染の要因です。テヘラン市の北にはアルボルズ山脈がそびえていて,テヘラン南部に位置する工業地帯からの排気ガスが,日中に南西から吹く風によってテヘラン市内に吹き込み,アルボルズ山脈に当たって南東に風が抜けていくため,一般的にテヘランの東や南東は汚染された空気が溜まりやすく大気汚染が悪化しやすい傾向にあります。西部(テヘラン22区:アーザーディ-スタジアム近辺等)は比較的空気がきれいであり,テヘラン中心部ではバイクの往来が多いため,空気が汚染されやすい状況にあります。
(2)傾向・動向
12月,1月,2月は,逆転層の影響で大気汚染が悪化します。オゾン値は年間を通して数値がそれほど変わりませんが,それ以外のPM2.5,PM10等を含む項目は,冬に数値が上がります。ウエブサイト(air.tehran.ir)では,過去10年間分の大気汚染データが蓄積されており,これらのアーカイブは2014年度より公開されました。
(3)健康への影響
PM10とは直径10ミクロン以下,PM2.5とは直径2.5ミクロン以下という意味で,粒子の直径が小さくなるほど,肺の奥へと侵入しやすくなります。これらは,喘息・気管支炎・肺癌などの呼吸器疾患や心臓病などの循環器疾患を発症・悪化させるリスクが高まるといわれています。高齢者や子供,呼吸器・循環器に既往歴のある方は,大気汚染に影響されやすく,特に注意が必要です。
(4)社会的影響
大気汚染が深刻化すると,学校等の教育施設では休校措置が取られることがあります。また,同様の大気汚染が社会問題となっている国々では交通規制なども施行されることがあります。
(5)対策
汚染源を特定し,それを改善するプロジェクト等は実施されています。例えば最近,テヘランで電気バイクやハイブリッドカー(トヨタプリウス)タクシーの導入が開始されました。また,テヘランにおいて低排出量ゾーン(Low emission zone)の設定が行われる計画もあるようです。ガソリンの質も改善されており,現在ではユーロ4のガソリンが供給されています。

2 大気汚染時の対策
大気汚染の影響を避けるためには,一般的に以下の方法が考えられます。
【室内環境】
●屋内では空気清浄機を,部屋の大きさに応じて設置する。特に,外気の汚染が深刻な場合には最大風量で運転する。PM2.5対応のフィルター交換の他,外フィルターに埃が詰まると風量を損ない,効果が薄れるため,適宜掃除をする。
●汚染が特に重度である際には,汚染された外気の流入が認められる玄関や扉枠のわずかな隙間を,テープ,ボール紙等でふさぐ。
●一方,外気の環境が良好な日には,室内のウイルス感染のリスクを下げ,体調不良の原因となる二酸化炭素の濃度を下げるため,窓の開放や換気扇等により,時間を区切って積極的に新鮮な外気を取り入れ,換気を行うことが推奨される。
【室外行動】
●屋外での活動をできるだけ避ける。(なお,屋内であっても,ロビーや廊下などの広い空間,出入口に近い空間は清浄でないケースが多くみられることに注意が必要。)
●通勤・通学等で外出する場合には,PM2.5対応マスクを着用する(「N95」マスクは,微粒子を95%以上遮断することを基準とした規格)。マスクは,あごや鼻の周辺に隙間ができないよう,顔の形にフィットしたものを選別する。

 

在イラン日本大使館
領事班