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海外安全対策情報(平成27年度第2四半期分)

 

1.社会・治安情勢
2013年8月に成立したローハニ政権により、本年7月14日、イランとP5+1(米、英、仏、露、中、独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされました。同合意により、制裁解除への期待が高まる中、インフレ率や失業率もやや改善傾向にはあるものの、依然として高いレベルにあり、イラン国内には依然厳しい経済状況が存在します。
なお、ISILについては、これまでイラン国内におけるテロの発生は見られていないものの、同組織の関係者とされる人物が逮捕された旨の報道が確認されております。
こうした状況下、治安面では、テロによる脅威は少ないものの、依然として邦人に対する強盗や窃盗が見られるなど、イラン国内での行動に当たっては十分に注意が必要です(特に外出時)。

2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)イランでは、犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが、各種報道に照らしてみると一般犯罪は慢性的に発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として、強盗(昏睡強盗、刃物を使用したスマートフォン等携帯端末を狙った強盗)、窃盗(ひったくり、スリ等)の事件が発生しております。
また、薬物事犯については、本年2月、イラン治安維持軍(警察)麻薬対策局が、「2014年中全国において2,770の麻薬密輸グループを摘発し、麻薬類506トン以上を押収した。」と発表しました。また、4月には、同局が、「イラン暦1393年中、全国において麻薬類555トンを押収し、麻薬関係者33万人を逮捕した。」と発表するなど、薬物情勢に好転の兆しは認められず、麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道は後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第2四半期中、邦人被害が1件発生しております。
【事例:窃盗(ひったくり)被害】
9月22日、邦人旅行者(男性)が、テヘラン市内の歩道橋上において、手に持っていた長財布(現金約15万円相当、クレジットカード等在中)を窃取されるひったくり事件が発生しました。
(3)邦人以外の主な凶悪犯罪事案
7月22日、イラン治安維持軍(警察)副長官は、過去4か月間に発生した殺人の件数は、前年同期と比べて2%減少し、盗難車発見件数は、同期と比べて11%増加した、と発表しました。 

3.テロ・爆発事件発生状況
(1)テヘラン市内
第1四半期中、テロ・爆弾事件発生の情報には接していません。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
同地域には、スンニ派テロ組織「ジュンドッラー(「神の軍」の意)」のほか、「ジェイシュ・アルアドル(正義の軍隊)」と呼ばれるスンニ派の反政府組織が存在し、同組織らによる政府関係者、治安関係者のほか、一般市民に対するテロ、爆発事件が頻発しています。
なお、同州においては最近、以下のテロ事件が発生しており、いずれも「ジェイシュ・アルアドル」による犯行と見られております。
① 7月11日、ガーセム・レザーイ治安維持軍(警察)国境警備隊司令官は、10日にイラン南東部シスタン・バルチスタン州の国境地域ミールジャーベ一帯において、同隊がパキスタンから入国してきたテログループと交戦し、被疑者3人を拘束、数人を殺害した、と発表しました。
② 8月2日、BBCモニタリングによると、イランのブログ「ジャシュラドル3」(ペルシャ語)は、ジェイシュ・アルアドルが、革命ガードのコッヅ部隊のメンバー1人をシスタン・バルチスタン州サラバンで殺害したと発表しました。
(3)北西部イラク国境付近
同地域では、「PJAK(クルド自由声明党)」がクルド人独立民主共和国家の建設を目指し、イラン政府、軍及び治安関係者を標的とした武装襲撃を敢行しており、8月11日、PJAKが、クルディスタン州カーミャーラン地区にて、バシジ(志願民兵)構成員5名を殺害しています。
また、同地域においては、下記報道のとおり、ISIL関連の動向が見られます。
① 5月30日、イランのアラヴィ情報相は、ISILとの関係を持つ集団がイラン国内で摘発され、解体されたことを明らかにした。
② 8月26日、イランの情報機関は、ISILの複数の構成員の身元を察知し、それらの構成員を逮捕したことを明らかにしました。
なお、6月28日、イラン治安維持軍(警察)のホセイン・アシュタリ-長官は、ISILによるテロの可能性について問われた際、「イラン国境は、治安機関によって、万全の警戒措置が採られている。」と述べています。

4.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
第2四半期中、誘拐事件が発生したとの情報には接していません。
(2)脅迫事件
第2四半期中、脅迫事件が発生したとの情報には接していません。

5.日本企業の安全に関わる諸問題
現時点、日本企業であることを理由とした脅威は認められないものの、上記治安情勢を考慮しますと、引き続き楽観視できない状況にありますので、注意が必要です。