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1.社会・治安情勢
2013年8月に成立したローハニ政権により,一昨年7月,イランとP5+1(米,英,仏,露,中及び独)との間でイランの核問題に関する最終合意がなされ,昨年1月に同合意が履行に移されました。他方,イラン国内の経済状況については,インフレ率や失業率もやや改善傾向にはあるものの,依然として高いレベルにあるなど厳しい状況にあります。
6月7日,テヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃により18人が死亡,約50人が負傷するテロ事件が発生しました。本件に関し,ISILとつながりのあるメディア「アマーク通信」が,ISILによる犯行と主張しました。同日,内務省は,本件被疑者は殺害され,状況は治安機関のコントロール下にあると発表しました。以後,治安機関は国内各地においてテロリストに対する検挙攻勢を強め,治安の安定化を図っておりますが,引き続き同様のテロ発生への警戒が必要です。
また,依然として邦人に対する強盗や窃盗等,一般犯罪の発生も確認されており,イラン国内での行動に当たっては十分に注意してください。
治安関連情報等については,当館から必要に応じて注意喚起を発出しておりますが,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページをご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。
なお,上記テロ事件に関し,海外安全情報(スポット情報)「テヘランにおけるテロ事件の発生に伴う注意喚起」(http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo_2017C129.html))が発出されておりますのでご確認ください。
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向
(1)概要
イランでは,犯罪件数等に関する統計が公表されていませんが,各種報道に照らしてみると慢性的に一般犯罪が発生しているものと考えられます。邦人に対する主な被害として,強盗(偽警察官による強盗,刃物を使用したスマートフォン等携帯端末を狙った強盗等),窃盗(ひったくり,スリ等)等の事件が発生しております。最近の一般犯罪に関する報道は以下のとおりです。
・ 5月14日,フーゼスタン州アフヴァーズにおいて,武装集団が交番を襲撃し,警察官2人が殺害された。
・ 6月8日,テヘラン市内の民家において,男が同民家の住人に酸をかけ,14人を負傷させた。家庭内問題が動機とみられる。
・ 6月19日,テヘラン州警察の発表によると,過去2日間で,テヘラン市内において窃盗及び強盗犯人145人が逮捕され,30のグループが摘発された。
薬物事犯については,4月9日,イランの麻薬対策庁は,イラン暦1394年中(西暦2016年3月20日~本年3月19日)にイラン全国で約705トンの麻薬を押収したと発表しました。また,同23日には,イラン法医局が,同1394年中にイラン全国で死亡した麻薬中毒者数は3,000人以上に上り前年比で0.6%増加したと発表するなど,薬物情勢に好転の兆しは認められず,麻薬密輸グループの摘発や麻薬類の押収に関する報道は後を絶ちません。
(2)邦人被害事案
第1四半期中,当館において3件の邦人被害を把握しております。
【事例①:窃盗(置引き)被害】
5月1日,被害者(旅行者)がシーラーズ空港の待合室で仮眠していたところ,バックパック内に保管していたカメラ,現金等を犯人に窃取された。
【事例②:窃盗(空き巣)被害】
被害者(在留邦人)が一時帰国により不在中,テヘラン市内シャルケガラブに所在する居宅に犯人が侵入し,現金在中の金庫等が窃取された。
3.テロ・爆発事件発生状況
(1)テヘラン市内
6月7日,テヘラン市内の国会事務所建物内及びイマーム・ホメイニ廟周辺において,複数の武装グループによる銃撃や自爆攻撃によるテロ事件が発生し,18人が死亡,約50人が負傷しました。本件に関し,ISILとつながりのあるメディア「アマーク通信」が,ISILによる犯行と主張しました。同日,内務省は,本件被疑者は殺害・拘束され,状況は治安機関のコントロール下にあると発表しました。本事件後,治安機関は国内各地においてテロリストに対する検挙攻勢を強め,6月24日には,イラン情報省が,テヘランを始めとする国内各地において,コッヅ・デー(6月23日)に係る行事を狙ったテロ攻撃を企図していたISIL関連テロ・グループを解体したと発表しました。
なお,アラヴィ情報大臣は,4月21日,イラン暦1394年中(西暦2016年3月20日~本年3月19日)に,同国治安機関が国内で30件に上る爆破テロ計画を阻止していたこと,5月5日には,同期間中に国内でのテロ攻撃を企図していた30のテロ・グループを特定・解体していたこと,さらに5月19日には,同日に実施された大統領選挙等の妨害を企てていた複数のテロリストを制圧・解体していたことを明らかにしていました。
(2)南東部パキスタン国境付近(シスタン・バルチスタン州等)
南東部パキスタン国境地域には,「ジェイシュ・アルアドル(「正義の軍隊」の意)」と呼ばれるスンニ派反政府組織等が存在し,同組織らによる政府,治安関係者等に対するテロ,爆発事件が複数件発生しています。同地域においては最近,以下の報道が確認されております。
・ 4月10日,イラン南東部シスタン・バルチスタン州ザヘダンの西約80kmの地点に所在するクリン(Kurin)において,同地区の革命ガード第110旅団に所属していたルーホッラー・アリー司令官がタクフィーリ・テロ・グループの襲撃に遭い,銃撃により殺害された。11日の革命ガードによる声明によれば,同テロリストらのうち2人はその場でバシジ(志願民兵)部隊により殺害され,その後,関係者2人が拘束された。
・ 4月26日,イラン南東部シスタン・バルチスタン州の対パキスタン国境地点ミルジャヴェ(Mirjaveh)において,イラン治安維持軍(警察)国境警備隊が,パキスタン領土内にいた武装集団から銃火器による攻撃を受け,同隊員10人が殺害されたほか,3人が負傷した。本件に関し,スンニ派組織「ジェイシュ・アルアドル」が犯行声明を発出した。
・ 6月13日,ガーセム・レザーイ・イラン警察国境警備隊司令官は,イラン北西部及び南東部国境地域において同隊による大規模な作戦が実施され,複数のテロリストが逮捕されたことを明らかにした。また,本作戦により南東部シスタン・バルチスタン州で逮捕された2人が,同州で2年前に国境警備隊員8人が殺害された事案に深く関与したスンニ派過激派組織「ジェイシュ・アルアドル」関係者であると述べた。
・ 6月14日夕刻,警察は情報省の協力を得て,チャーバハールの反政府組織「アンサール・ル・フォルガン」のテロ集団の5名を逮捕し,3名を殺害した。情報省職員のうち,1名が死亡し,1名が負傷した。自爆ベスト2着と大量の弾薬が発見された。テロリストは「ガドルの夜」(注:本年6月13日,15日及び17日に該当した宗教行事の日)に,作戦を実行する意図を有していた。
・ 6月15日昼,イラン革命ガードの部隊が,シスタン・バルチスタン州内の山岳地帯ガスレ・ガンドにおいて,タクフィール・テロ・グループを情報活動により捕捉し,複数の構成員を殺害又は負傷させた旨の声明を発表した。同作戦において,600kgの爆発物を積載した車両が破壊されたほか,自爆攻撃用爆薬5点,700kgの爆発物,数千点の武器,弾薬等が押収された。
・ 6月18日,パークプール革命ガード陸軍司令官は,15日からシスタン・バルチスタン州内の山岳地帯ガスレ・ガンドにおいて実施されていた革命ガードによるテロ・グループの掃討作戦が完遂され,全てのテロ・グループ構成員が殺害されたと述べた。また,同司令官は,殺害された複数の構成員は反政府組織「アンサール・ル・フォルガン」に属していたと述べ,19日,革命ガードは,殺害された者の中に,同組織のリーダーであるジャリル・ガンバルゼヒが含まれていたと発表した。
(3)北西部イラク国境付近
北西部イラク国境地域では,「PJAK(クルド自由生活党)」がクルド人独立民主共和国家の建設を目指し,イラン政府,軍及び治安関係者を標的とした武装襲撃を敢行するなどの動向が見られるほか,ISIL関連の動向も見られます。最近も以下の報道が確認されております。
・ 本年5月27日,イラン北西部西アゼルバイジャン州警察長官は,同日午後6時頃,同州オルミエ市郊外の対トルコ国境地域において,イラン警察国境警備隊がPJAKによる襲撃に遭い,同隊員2人が死亡,7人が負傷したことを明らかにした。
・ 6月20日,ガーズィプール西アゼルバイジャン州選出国会議員は,西アゼルバイジャン州にある情報機関が,西アゼルバイジャン州のピーランシャフル,サルダシュト,マハーバード,ブカーン,タカーブにおいて,ISILテロ・グループ分子40名を逮捕したことを明らかにした。当該分子の首領は,「ガドルの夜」にテロ事件を実行しようとしたが,西アゼルバイジャン州情報機関に阻止されたとされる。
・ 6月23日,イラン革命ガードの部隊が,西部クルディスタン州において,テロリスト3人を殺害し,1人を拘束した。同テロリストらはイラン国内におけるテロ攻撃を企図していたとし,同テロリストから複数の武器・弾薬等が押収された。
・ 6月25日,ケルマンシャー州西部のネエマト・サーデギ検事が,6月7日に発生したテヘランにおけるテロ事件以降,同州において治安機関が50人以上のテロリストを拘束していたことを明らかにした。また,拘束されたテロリストから,自爆ベルト,遠隔起爆装置,複数の武器等を押収したと述べた。
(4)その他の地域
・ 5月13日,イラン情報省は,同国内で数千人に及ぶ無辜の人々を殺害することを目的としたテロ攻撃及び外国へのスパイ活動を企図していたテロ・グループを摘発し,様々な種類の爆発物を押収したと発表した。
・ 5月15日,イラン南西部フーゼスタン州警察のアリ・カーゼムプール次長は,同日未明,武装した集団が同州アフヴァーズに所在する警察署を襲撃し,警察官2人が殺害され,4人が負傷したことを明らかにした(16日,国外逃亡を試みていた本件に係る複数の被疑者が逮捕された)。
・ 6月12日,イラン南部ホルモズガン州警察長官は,同警察が11日夕刻,同州ルーダンの山岳地帯で武装した4人グループを銃撃戦の末殺害したことを明らかにした。4人のうち2人が外国人と特定された。また,警察は本グループの動向を情報活動により捕捉していたとし,同人らの殺害の場でISILの旗,自動小銃4丁,弾薬,爆発物等を押収した。
・ 6月13日,イラン南部ブーシェフル州警察長官は,同州バンダル・カンガンにおいて,キーシュ島を始めとする同地周辺海域において船舶を強奪するなどの海賊行為を繰り返していたグループの拠点を特定し,5人を逮捕したと述べた。
4.誘拐・脅迫事件発生情報
(1)誘拐事件
4月12日,イラン北東部ホラサーンラザヴィ州マシュハドにおいて,銃を所持した男が女性1人及び子供2人を人質に取り家屋に立て籠もりましたが,警察の部隊が同所に突入し,人質を解放しました。当該解放作戦により人質の女性が軽傷を負ったほか,自殺を試みた犯人が首を負傷し,病院に搬送されました。
(2)脅迫事件
第1四半期中,脅迫事件が発生したとの情報には接していません。
5.日本企業の安全に関わる諸問題
現時点,日本企業であることを理由とした脅威は特段認められないものの,テロ情勢を含む上記治安情勢を考慮しますと,引き続き楽観視できない状況にありますので注意が必要です。冒頭に記載したとおり,定期的に最新の報道や当館又は外務省海外安全ホームページ等をご確認いただくなど,自らの安全確保のための情報収集を心掛けてください。